拡散と収斂を繰り返すその1枚の狭間には、決して紙一重ではない、調整者の苦悩が折り重なる。』
1.最初に
こんにちは、杉山です。気取った始まりになってしまいましたが、今回からデッキの解説記事、とくにカード選択や枚数選択に焦点を当てた記事を書かせていただくことになりました。おそらくメジャーデッキよりも少し外れたデッキを取り扱うことが多くなるかと思います。
2.今回のテーマ
今回解説するデッキですが、先日のGP京都でも使用した、【スゥルタイ巻きつき蛇】になります。GPの成績は5-2-1、MOでは4度5-0をしており、構成には98%満足していますが、それでも1枚のゆらぎが残ります。 そのゆらぎは可能性でもあり、贅肉でもあるでしょう。そんな、GPを終えて数枚の変更を行ったリストがこちらです。
:Download MO Format |
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土 地 |
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4枚 | 1枚 | 2枚 | 4枚 | 2枚 | 4枚 | 3枚 | 4枚 | |
ク リ │ チ ャ │ |
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4枚 | 4枚 | 4枚 | 4枚 | 4枚 | 2枚 | |||
呪 文 |
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3枚 | 2枚 | 3枚 | 2枚 | 4枚 | ||||
サ イ ド ボ │ ド |
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2枚 | 2枚 | 1枚 | 2枚 | 2枚 | 1枚 | 2枚 | 2枚 | |
1枚 |
3.各カード
それでは各カードの採用枚数について、見ていきましょう。
このデッキの根幹で、4枚確定のカードです。
時に《歩行バリスタ》を3にしたくなったりするかもしれませんが、《歩行バリスタ》があるからこそ《致命的な一押し》の枚数を減らすことができ、マナフラッドの受けであり、コントロール相手にもけして不要牌にはならず、《ハダーナの登臨》とコンボであり、また自然と《ヴラスカの侮辱》を構えられるようになります。ぐっとこらえて4枚です。
《歩行バリスタ》適正枚数:4枚
優先順位は《導路の召使い》>《マーフォークの枝渡り》>《翡翠光のレインジャー》となります。
《翡翠光のレインジャー》は確かにパワーカードかつ単体で《ハダーナの登臨》を変身させられる1枚ですが、他の2種と違ってキープ基準になりづらく、緑緑を要求しエネルギーも生み出さないため、まま事故の要因にもなります。もしも《導路の召使い》の枚数を減らしているなら、更にエネルギー切れのリスクは高まります。また環境に《歩行バリスタ》が増えており、良い的になるのもよくありません。
次に《導路の召使い》と《マーフォークの枝渡り》との比較ですが、このデッキは4マナ以降のタップイン確率が非常に高く、スムーズに《逆毛ハイドラ》をキャストすることを考えると《導路の召使い》は最悪3ターン目のキャストでも、そこまで悪い動きとは言えません。また《逆毛ハイドラ》は通常、着地の際に除去られるリスクがありますが、《導路の召使い》はそれをケアできます。《光袖会の収集者》との相性もそうですが、CIPのエネルギー2つは想像以上に輝きます。
《導路の召使い》3枚、《マーフォークの枝渡り》2枚といった構成も試しましたが、《巻きつき蛇》《歩行バリスタ》《導路の召使い》《光袖会の収集者》土地3枚とあった時、例え除去られても仕事をし、生き残った時のリターンが一番大きい《導路の召使い》が2ターン目のアクションとして一番効率がよく、後半に引いてもエネルギー供給と最低限のタフネスを持つため、《導路の召使い》が4枚となりました。
(もちろん除去られなければ《霊気拠点》からの《光袖会の収集者》が1番強いんですけど)
あとで触れますがこのデッキのマナベースはかなり厳しいため、単純に少しでも色マナのフォローになる可能性を上げるという理由もあります。
《導路の召使い》適正枚数:4枚
このデッキの顔となるカードです。
伝説ですが変身で2枚まではフォローできるため、このカードを引いた時と引かなかった時のデッキの強さがまったく違うため、最低3枚は積むべきです。 GP時は4枚の構成で臨み、《ハダーナの登臨》のおかげで勝ったゲームも多数。ただし3枚以上引いて負けたゲームもあったので、結論付けられないところです。《熱烈の神ハゾレト》や《スカラベの神》と違って対処されにくいため、過剰に引き込むことに言い訳が効きづらいのが辛いところです。
《ハダーナの登臨》適正枚数:3or4枚
ちなみに過剰な引き込みリスクを緩和するために《既知の勇者》の採用を試したこともありますが、《ハダーナの登臨》型は《翡翠光のレインジャー》や《スカラベの神》を採用するミッドレンジ型と違ってビートに寄っているため、悠長に過ぎる、という結論となりました。
マナカーブの3マナ域、もっと言えば《ハダーナの登臨》の穴埋めとしてです。
《ピーマの改革派、リシュカー》を試していましたが、どんなデッキ相手にもサイドアウトされたため赤緑モンスターやビッグレッドの隆盛を受け《霊気圏の収集艇》を試験的に採用しています。《ハダーナの登臨》との相性もグッド。
マナカーブを重視し《翡翠光のレインジャー》含め3マナ域を2スロット取るリストをよく見ますが、このデッキの3ターン目は2+1マナの動き(実際に1マナの動きをせずとも、構えるだけでも効果的)やタップイン処理になることも多く、そこまで3マナのカードの枚数は重要ではありません。
《霊気圏の収集艇》適正枚数:2枚
《ピーマの改革派、リシュカー》適正枚数:0~1枚
《新緑の機械巨人》3枚目と《逆毛ハイドラ》4枚目の比較は悩ましいところですが4枚採用している《導路の召使い》、そして《ハダーナの登臨》を考えるとやはり《逆毛ハイドラ》に軍配が上がります。 ハイドラの安全な着地のために《光袖会の収集者》でのドローを我慢することを恐れないで下さい。結局の所このデッキは《逆毛ハイドラ》と《ハダーナの登臨》を揃えれば勝ちなのです。
《逆毛ハイドラ》適正枚数:3or4枚
スタンダード最強カードである《スカラベの神》。
自分もかなりこだわって《スカラベの神》を試したのですが、最終的には《新緑の機械巨人》に軍配が上がりました。やはり《スカラベの神》は受けのカードで、序盤を凌ぐカードの枚数的に、真価を発揮できるとは言いづらかったためです。もちろんフラッド受けとしては最高のカードなのですが、《ハダーナの登臨》《巻きつき蛇》、そしてなにより《歩行バリスタ》との相性を考えると《新緑の機械巨人》が優先されます。
また、よくあるケースとして、全て捌かれたあとに《新緑の機械巨人》が着地。《ハダーナの登臨》(+《顕在的防御》or2枚目の《ハダーナの登臨》)だけでの理不尽なワンショットキルがあり、このデッキの強みになっています。
《新緑の機械巨人》適正枚数:2or3枚
このデッキの強みは《巻きつき蛇》と《ハダーナの登臨》によるコスト踏み倒しと《顕在的防御》でのテンポ勝ちにあります。《ヴラスカの侮辱》をはじけた時などはそれだけで勝ちがぐっと近づきます。 その意味では《強迫》は《顕在的防御》の代わりにはなりません。
また、《致命的な一押し》も1マナの軽さで序盤の脅威に対処できるため、2アクションが取りやすいという強さがあります。その分黒マナの要求が厳しくなりがちなので、マナベースには気を使いましょう。
《顕在的防御》《ハダーナの登臨》+除去を固め引く負け筋もありますが、ミッドレンジ/コントロール相手には引くか引かないかで勝率がまったく違うため、《顕在的防御》3枚目を積んであります。赤単相手にも相手の除去を弾く他、時に除去として働くこともあるため有用です。
《顕在的防御》適正枚数:2or3枚
《致命的な一押し》適正枚数:2or3枚
前述したデッキの強みから言うと逆方向を向いているカードであり、積極的な採用はしたくないのですが、《スカラベの神》《再燃するフェニックス》という2大負け筋に対応するためにはメインサイド合わせて4枚取るのは仕方ないところです。
《ヴラスカの侮辱》適正枚数:3or4枚
何度も繰り返しで申し訳ないのですが、このデッキのマナベースは驚くほど弱く、色マナ/エネルギーは不足し、ファストランドを2種フルに積んでいるもののタップインは頻発します。 しかし背に腹は代えられないので、黙って2色土地は積められるだけ積みましょう。タップイン祭リスクとの兼ね合いではありますが。
また《致命的な一押し》との兼ね合いで《穢れた果樹園》ではなく《進化する未開地》を選びたくなる気持ちもありますが(《豪華の王、ゴンティ》除去りたい)、絶対に色事故するのでやめましょう。
《異臭の池》適正枚数:3or4枚
《穢れた果樹園》適正枚数:2枚
マナベース的に無色土地が積めないため、貴重なユーティリティ土地です。
相手の《光袖会の収集者》や《再燃するフェニックス》トークンや《歩行バリスタ》を除去したり、《熱烈の神ハゾレト》を弱体化させたりと想像よりも少しだけ用途は広いです。 《イフニルの死界》は黒マナの枚数的にこれ以上積めないので、餌として《ハシェプのオアシス》を1枚程度積むのもありでしょう。(《ハシェプのオアシス》自体を起動したことは一度もありませんでした)
《イフニルの死界》適正枚数:2枚
4.サイドボード
サイドボードはメタで流動的なため解説するのは好きではないので、《ヤヘンニの巧技》と《貪る死肉あさり》《大災厄》《打ち壊すブロントドン》のラインが気に入っていることだけ触れておきます。
言われているほど吸血鬼との相性は良くないので、《ヤヘンニの巧技》や解呪系はしっかり取りましょう。 また、《貪欲なチュパカブラ》は除去としては二線級ですが、このデッキでは《ハダーナの登臨》の受けとしてクリーチャーの頭数が必要であり、テキスト以上の強さがあります。
5.おまけ
GPでの1戦目、自分は《森》《森》《導路の召使い》《巻きつき蛇》《歩行バリスタ》《光袖会の収集者》《顕在的防御》を悩みながらキープ、リスク承知でリターンを求めてキャストした2ターン目の《導路の召使い》は除去られ、3ターン目に引いたのは3枚目の《森》。
自分は軽く嘆きながら《森》セットから《歩行バリスタ》をキャストしたのですが、《森》をセットした瞬間に大後悔してしまいました。当然というべきか次のターンのドローは《花盛りの湿地》。 仮に《植物の聖域》や《異臭の池》《穢れた果樹園》だったとしても《逆毛ハイドラ》引きの受けは残ったままですし、手拍子でプレイしすぎてしまいました。 結局そのゲームはタップインが響き負け。
そもそも《顕在的防御》を構えられるまで《導路の召使い》をキャストしないことや、マリガン判断など疑問点は多いのですが、こういう小さなところで天と地の差が出るので気をつけたいものです。
6.最後に
現環境も残り少ないですが、多角的な動きと豪快なワンショットキルが魅力的なスゥルタイ巻きつき蛇。プレイしていてとても楽しいデッキです。 これからはこんなプレイしていて楽しいデッキをたくさん解説していければと思います。 それでは最後まで読んでいただき、ありがとうございました!