前編はこちらから:《前編》GPメンフィスレポート -グルールアグロが出来るまで-

こんにちは、高尾です。前回は「GPメンフィス編」と題し、グルールアグロができるまでの過程と大会レポートをお届けしました。今回はその続報となる「MCクリーブランド編」です。ちなみに本稿は基本的にスタンダードのみのお話となりますので予めご了承下さい。ラヴニカ・ドラフトの戦略については、実力的にも時期的にも需要がないと思いますので敢えて触れていません。


~MCクリーブランド編~


1.メタゲーム予想


『MCクリーブランド』の開催は『GPメンフィス』からわずか一週間後。とはいえ昨今のスタンダードは目まぐるしいスピードでメタゲームが変化していくため、メタ分布がそのまま並行移動するとは到底思えません。そこで以下のいくつかの指標からメタゲームの動向を予想してみました。

・『GPメンフィス』ではスゥルタイミッドレンジに次ぎ、白単アグロと青単アグロが大多数を占めた。
・比較的新しめのデッキとして頭角を現したのが優勝したラクドスミッドレンジ、僕のグルールアグロ、原根くんのシミックネクサス。
・この新生3つはGP以降、MOやMTGAでも試しているプレイヤーが多く見受けられた。

これらの要素を『GPメンフィス』時のメタゲームに当てはめると・・・

・Tier2だったネクサス系はTier1に格上げ。
・ラクドスとグルールがTier2に仲間入り⇒元々少なかった赤単アグロやエスパーコントロール、イゼットドレイクはその分減少。

▼GPメンフィス時のメタゲーム
Tier1:スゥルタイミッドレンジ、白単アグロ(タッチ青含む)、青単アグロ
Tier2:赤単アグロ、ネクサス系、エスパーコントロール、イゼットドレイク

↓ ↓ ↓ ↓ ↓

▼MCクリーブランド時のメタゲーム予想
Tier1:スゥルタイミッドレンジ、白単アグロ(タッチ青含む)、青単アグロ、ネクサス系
Tier2:赤単アグロ、エスパーコントロール、イゼットドレイク、ラクドスミッドレンジ、グルールアグロ

アーキタイプがさらに増えてしまったものの、Tier1の3つに有利そうなデッキを持ち込むことが安定に思えます。

2.デッキ選択理由


アメリカには『GPメンフィス』から前乗りしていた関係で、『MCクリーブランド』直前の木曜日までメンフィスに滞在していました。 その間ひたすらドラフトやスタンダードの練習に明け暮れるはずだったのですが・・・

なんと必需品と言ってもいいノートPCを家に忘れてきてしまったのです!!これではMOやMTGAを使った練習ができません。


(出発時にコンセントを抜いたりして持って行く手筈をしてたのに、かばんに詰め忘れたなんて恥ずかしくて言えない)

当然武蔵調整グループのみんなはノートPCを持参していたので、MOやMTGAを中心に練習を行っていました。

僕には新たなデッキを作る時間も、使ったことのないデッキを一から回す時間もありません。前環境で愛用していたボロスアグロも検討こそしたものの、新カードがほぼ皆無で周りのデッキに比べて伸び代がないのは明白でした。他にも白単アグロや青単アグロは比較的使える部類ですが、明確にガードは上がると思っていましたし、青単アグロ同系はかなりプレイスキルで差が出るのでツワモノの揃うミシックチャンピオンシップに持ち込むことは得策ではないと考えていました。

したがって、その時点で僕にはグルールアグロ以外の選択肢がほぼ消えました。とはいえTier1である白単アグロと青単アグロには有利なデッキなので、ネタバレしているとはいえ悪い選択肢だとは思いませんでした。

またMOとMTGAでひたすら数打つ練習ができなくとも、その宿には日本が誇るトッププロ集団がおり、質の高い練習には恵まれています。ですので、これまで実践経験の浅かったシミックネクサスとラクドスミッドレンジの2つと重点的に練習することで、最低限の練習を担保することにしました。

検証の結果、シミックネクサスにはメインボードは不利なもののサイド後は有利で総合的には不利よりの五分。ラクドスミッドレンジに関してはグルールに《溶岩コイル》でしか捌けないクリーチャーが複数入っている関係で、《ザル=ターのゴブリン》⇒《グルールの呪文砕き》⇒《再燃するフェニックス》のように動ければ最終的に相手の《溶岩コイル》が枯渇して勝てることが発覚。また、ラクドス側の《宝物の地図》が先手後手で強さがかなり変動するので、先手ゲーになりやすいという結論になりました。

結局『GPメンフィス』時のリストから加えた変更点は僅か2枚です。

⇒
《ショック》1枚 《溶岩コイル》1枚

メインから同系やラクドスミッドレンジを意識して《溶岩コイル》を増量。

⇒
《焦熱の連続砲撃》1枚 《シヴの火》1枚

《焦熱の連続砲撃》は白単以外にはそこまで有効ではなかった上に元々有利なマッチアップなので減らし、《ショック》の4枚目として《シヴの火》を採用。アグロにしかサイドインしないのでプレイヤーに打てることよりもキッカーで打てることの方が重要です。


『Gruul Aggro(MC Cleveland)』
高尾 翔太

土
地
24
枚
4枚 4枚 2枚 4枚 9枚 1枚
ク
リ
│
チ
ャ
│
26
枚
4枚 4枚 3枚 4枚 4枚 4枚 3枚
呪
文
10
枚
3枚 3枚 2枚 2枚
サ
イ
ド
ボ
│
ド
15
枚
1枚 3枚 2枚 3枚 1枚 2枚 1枚 1枚
1枚


3.大会結果

Round1 : (ドラフト) ××
Round2 : (ドラフト) ○○
Round3 : (ドラフト) ×○○
Round4 : 白単アグロ ×○×
Round5 : バントネクサス ○×○
Round6 : 青単アグロ ○×○
Round7 : ディミーアコントロール ××
Round8 : 青単アグロ ×○×
Round9 : (ドラフト) ○○
Round10 : (ドラフト) ×○○
Round11 : (ドラフト) ○○
Round12 : イゼットドレイク ○○
Round13 : バントネクサス ×○○
Round14 : 青単アグロ ××
Round15 : スゥルタイミッドレンジ ××
Round16 : シミックネクサス ×○×

ドラフト5-1、スタンダード4-6。どうしてこうなった...。ドラフトはメンフィスで毎日やってたこともあって申し分ない成績で良かったのですが、スタンダードは前週が嘘のように振るわず。

今のスタンダードはかなり先手が有利だと思っていて、今回はほとんど後手だったり時差ボケがなかなか解消されずにミスを繰り返したりと内的要因もあったのですが、それ以外にも原因はあるはず。一体何がいけなかったのか。それに気づいたのは大会終了後ではなくラウンド中、いや大会前の準備段階から心のどこかで引っかかっていたのです。

4.デッキ構築の影に潜む罠


僕は前週の『GPメンフィス』でTOP4という好成績を収めることができました。もちろんうまくメタゲームに嵌ったりわからん殺しもあったと思うのですが、それだけではありません。実は全体的に相手のミスで拾ったゲームが多かったのです。

話は少し逸れますが、プロポイントの制度がいずれなくなることが発表され、プロにとってグランプリの価値は薄れてしまいました。人によっては賞金などのリターンよりも、ミシックチャンピオンシップ直前に自らデッキを晒すリスクの方が上回ってしまったのです。その結果、海外のほとんどのプロは『GPメンフィス』に不参加で、TOP8へのハードルは普段より低くなっていました。

デッキを試す場としてちょうどいいと思っていましたが、正直逆効果だったとさえ思えます。もちろん航空券や権利を得られたので参加したこと自体に悔いはないのですが、気構えとしては"デッキがちゃんと回るか確認する程度"に留めておいた方が良かったです。

グルールアグロは白単、青単、赤単の3大アグロに有利だということを前回お伝えしました。この認識は今でも間違ってないと思います。ただその"程度"の認識がずれていて、めちゃくちゃ有利なわけではなかったというのが今回見誤った点です。

白単には先手3ターン目に《敬慕されるロクソドン》を出されると《ゴブリンの鎖回し》が間に合わず、そのまま負けてしまいます。青単にも同じようなことが言え、後手の《ゴブリンの鎖回し》は既に《執着的探訪》をつけられていたりカウンターを構えらている状況下では絶対的な強さはないのです。グランプリではあまり出されなかった《波濤牝馬》も今回は毎度のように出され、《執着的探訪》がついて手がつけられない生物になり敗北を喫しました。そもそも相手のプレイにほとんどミスがなく、『GPメンフィス』のように甘くありませんでした。もっと武蔵調整グループ内でこのマッチアップをやっておけばと後悔先に立たず。

もし白単や青単アグロを舐めていなければもう少し意識した構成にできたはずです。例えば白単相手の後手時で必要な《焦熱の連続砲撃》を減らすことはなかったでしょうし、サイドの《争闘+壮大》は3枚目の《クロールの銛撃ち》の方がいいことに気づけていたでしょう。そもそもメインに《クロールの銛撃ち》を採用するくらい尖らせた方が良かった可能性すらあります。


今後はただ有利か不利かというざっくりとしたものではなく、メインはどの程度有利か、サイド後はどの程度きつくなるのかなど明確な相性を突き詰めることが課題です。そのためにもある程度デッキの基盤が固まったら、ちゃんとうまい人とも何度か対峙して認識のずれを補正していく必要があります。

5.グルールアグロ最新型


ミシックチャンピオンシップでの反省を踏まえて改良したリストがこちら。


『Gruul Aggro(New)』
高尾 翔太

土
地
24
枚
4枚 4枚 2枚 4枚 9枚 1枚
ク
リ
│
チ
ャ
│
28
枚
2枚 4枚 3枚 2枚 2枚 4枚 4枚 4枚
3枚
呪
文
8
枚
2枚 2枚 2枚 2枚
サ
イ
ド
ボ
│
ド
15
枚
1枚 4枚 3枚 2枚 2枚 2枚 1枚

変更点は以下の通りです。

▼メインボード

・《狂信的扇動者》の採用


《ショック》と役割がかぶるという理由で不採用でしたが、環境にタフネス2がほとんどいないので《ショック》と散らしました。《正気泥棒》は《クロールの銛撃ち》でも《争闘+壮大》でも討ち取れるので問題ないです。

・《ザル=ターのゴブリン》を減らし、《クロールの銛撃ち》を採用


白単や赤系には《ザル=ターのゴブリン》のタフネス3が重要なのですが、《手付かずの領土》は極力"戦士"を指定したいので《クロールの銛撃ち》の方が出しやすいです。そして何よりサイドボードの枠を大幅に空けられます。

▼サイドボード

・《燃えがら蔦》の増量


ネクサスとのマッチアップはメインはほぼ落とすのでサイド後は確実に取り返す必要があります。これを1枚引けるかどうかで勝率が全く違うので増量しました。

・《不滅の太陽》の増量


これまた苦手なスゥルタイやエスパー相手に着地すれば勝率が格段に上がるカードなので増量。

・《森》の採用


《燃えがら蔦》を4枚使うには緑マナカウントが若干不足しているのと、《不滅の太陽》を2枚運用するには土地の枚数が足りていないことから採用。


6.主要マッチアップにおけるサイドボーディング



スゥルタイミッドレンジ


I
N
2枚 2枚 1枚 1枚
O
U
T
2枚 2枚 2枚

少しだけコントロールにシフトさせます。

白単アグロ(タッチ青含む)


I
N
1枚 2枚
O
U
T
1枚 2枚

元々有利なマッチアップですが、先手3ターン目《敬慕されるロクソドン》や《ベナリア史》連打だけが負け目なのでそれを防げる《焦熱の連続砲撃》は2枚必要です。

青単アグロ


I
N
1枚
O
U
T
1枚

メインからかなり有利な構成にしたのでほぼチェンジしません。

シミックネクサス


I
N
4枚 3枚 1枚
O
U
T
4枚 2枚 1枚 1枚

このマッチの《再燃するフェニックス》はリミテッドのコモンクリーチャーのようなものなので真っ先にサイドアウトしましょう。また《手付かずの領土》を減らして《ゴブリンの鎖回し》が若干出にくくなりますが、同時に《ゴブリンの鎖回し》も減らします。

バントネクサス


I
N
4枚 3枚 1枚 1枚
O
U
T
4枚 2枚 2枚 1枚

《ドミナリアの英雄、テフェリー》を止めるために《不滅の太陽》を1枚だけ入れます。

赤単アグロ


I
N
1枚 1枚
O
U
T
2枚


エスパーコントロール


I
N
3枚 2枚 2枚
O
U
T
3枚 2枚 2枚

コントロール相手はマナフラッドよりはマナスクリューよりの方が勝てるので土地は増やしません。

イゼットドレイク


I
N
3枚 1枚
O
U
T
2枚 2枚


イゼットフェニックス


I
N
3枚 1枚 1枚
O
U
T
2枚 2枚 1枚

《ゴブリンの電術師》を除去するために《ショック》は残します。逆に《プテラマンダー》は入っていないので《ゴブリンの鎖回し》は減らして構わないです。そのため《山》も《森》に変えた方がいいです。


グルールアグロ


I
N
1枚 1枚
O
U
T
2枚


7.おわりに


グルールアグロは3大単色アグロに有利なことから、それらが多いMTGAのBO1で流行っているようですね。プロツアーチャンプであるGerry ThompsonもグルールアグロでMythicに到達していました。他にも殿堂であるFrank Karstenがこれの亜種であるジャンドウォーリアーを『MCクリーブランド』で使っていたりととても光栄です。みなさんも単色アグロが憎い場合はぜひ一度手に取ってみることをお勧めします!

個人的な話になりますが、直近のプレミアイベントは非常に調子がよく来期はシルバーレベルが決定しました。


1年間で29点は何気に僕の最高記録だったりします。2つ先まではミシックチャンピオンシップに出れることも確定しているので、来期はゴールドレベルになれるようまた一歩成長を見出せたらと思います。

それでは!